会長挨拶

第29回日本摂食症学会学術集会 会長:村井 俊哉 (京都大学大学院医学研究科・精神医学教室)

第29回日本摂食症学会学術集会

会長 村井 俊哉

(京都大学大学院医学研究科・精神医学教室)

謹啓

このたび、来る2026年(令和8年)10月10日(土)、11日(日)に、歴史と文化が息づく古都・京都の地にて、第29回日本摂食症学会学術集会を開催させていただく運びとなりました。実りの秋が深まる季節に、皆様をお迎えできますことを心より光栄に存じます。

さて、本学術集会のテーマは「あらためて『食』を考える」といたしました。

近年、摂食症を取り巻く臨床や研究において、その生物学的側面や疾患としての特性に、強い関心が寄せられる傾向にあります。こうした専門的な探求は、治療の発展にとって重要な視点であることは論をまちません。しかしその一方で、私たちは、専門家として「食」そのものが持つ広がりと豊かさ、そしてその全体像から、この病を捉え直す視点こそ、私たちが今、共に問い直すべきテーマだと考えます。

「食」とは、単に栄養を摂取し生命を維持するための行為に留まりません。それは文化を形成し、人と人との繋がりを育み、記憶や感情と深く結びつく、人間の根源的な営みです。本学会では、一度この原点に立ち返り、「食」という大きな文脈の中に摂食症を位置付け直すことで、日々の臨床に、新たな視座と豊かな示唆をもたらす機会としたいと考えております。

この多角的な理解を実現するために不可欠なのが、多職種による連携です。医師、看護師、公認心理師、作業療法士、管理栄養士、ソーシャルワーカーをはじめ、多様な専門性を持つ私たちが、それぞれの視点と経験を分かち合い、対話を重ねることが、複雑な問題を抱える患者さん一人ひとりに質の高いケアを届けるための、揺るぎないチーム医療の基盤を形作ると考えております。

会場となります京都は、季節の移ろいを繊細に映した食文化が、人々の暮らしに深く根ざしてきた街です。華美な賑わいとは一線を画した静寂と澄んだ空気の中で、皆様が思索を深め、互いに学びを深める時間は、本学会のテーマを体感するまたとない機会となることでしょう。

本学術集会が、ご参加の皆様にとって実りある交流の場となり、明日からの臨床を豊かにする新たな気づきを得る契機となりますことを、心より願っております。

錦秋の京都にて、皆様とお会いできますことを楽しみにしております。

謹白

2026年1月吉日